記者が見た開戦の瞬間
Zばあちゃん “の悲しい正体とは？記者が見た戦争の始まり
ウクライナ北東部ハルキウの郊外、前線から5キロほど離れたところ。記者に同行していたウクライナ兵が突然、「ドローンが接近している」と大声で叫んだ。
ドローンが接近している。今すぐ離れないと！」。
偵察機と思われるドローンが上空を飛行していた。ロシア軍が飛ばした可能性が高く、ウクライナ兵に見つかれば武器の攻撃対象になりかねない。状況を把握する間もなく、彼は車に飛び乗り、猛スピードで来た道を戻っていった。
侵攻当日から3回の現地取材
7月後半。ロシア軍のウクライナ侵攻が始まってから、半年が経過していた。私は侵攻当日から3回、現地に足を運んだ。
子どもの病院が意図的に爆撃された、父親が戦車に轢かれて死んだ……。ウクライナのあちこちで、耳を塞ぎたくなるような恐ろしい事件が起きていた。
今回のレポートでは、ロシアのプロパガンダの犠牲になり、「ウクライナ人の敵」となってしまった「おばあちゃん」に出会いました。彼女の平穏な日常を狂わせたきっかけは、現代戦争を象徴する「SNS空間」という新たな戦場だった。
すべては空港からの爆撃音から始まった。
キユーピー侵攻の前日
2022年2月24日。大方の予想を裏切り、ロシアによる悪夢のような全面侵攻が始まった日。その日、私はウクライナに滞在し、侵攻の様子を取材していたが、爆撃の音がウクライナの首都キウの街に響いた。
首都キウ。思えば、すべては前日の23日午後11時過ぎに受けた一本の電話から始まった。
前日の23日午後11時過ぎに受けた電話で、「この後、明け方までの数時間に動きがありそうだ。気をつけた方がいい。
この電話は、数日前からキエウに滞在し、取材を続ける中でさまざまな情報を提供してくれていた人物からのものだった。ロシア軍は昨年11月頃から、軍事侵略の意図はないとして、訓練と称してウクライナ国境周辺に大規模な部隊を配備してきた。時間の経過とともに緊張が高まり、展開の規模が大きくなる中、私たちJNNの取材班は1月中旬から途絶えることなく、ウクライナ情勢に備えた取材を行っていました。
米・バイデン大統領
2月に入ると、より緊急性の高い情報が入ってくるようになった。米国政府も諜報活動で得た情報を積極的に公開し、国民に警告を発していたが、「○月○日におそらく侵攻がある」というように、具体的な日時を指定することが珍しくなかった。
しかし、その日を迎えるまでに何の行動も起こさないのだから、この電話の内容をどこまで真剣に受け止めればいいのか、悩んだことを覚えている。
しかし、情報の具体性、そして何より電話の声の切迫感から、一緒に仕事をしていたカメラマンにインタビューを申し込んだ。夜中にタクシーを捕まえ、”万が一 “のために目をつけていた欧米の大手メディアが集まるホテルへ移動した。深夜12時を回っていたが、ロビーのラウンジでは市民がグラスを片手に談笑しており、平和な夜という印象だった。